「他人はどうでもいい」
昔はそう思っていた。
いや…思っていたというわけじゃないんだけど、無意識に他人に対してそういう態度をとっていた。
他人のことなんて信じてなかったから表面上の付き合いばかりしてたし、自分以外の存在とかまじどーでもいい。自分さえよければオッケーみたいな感じ。
友だちと遊ぶ約束をしていても、前日に酒を飲みすぎて翌日は二日酔い。「ダルいからリスケしよ」と、当日ドタキャンしたり。
結婚式でさえ欠席したこともあった。「めんどくさいからいーや」って思って、電報とちょっとしたギフトだけ送ってすませた。
彼氏とのデートもずっと前から約束してたのに、「今日は気分が乗らないから」っていう自分勝手な理由で断ったこともある。
過去の自分の行いを振り返ると、他人のことをないがしろにして自分第一の振る舞いをしていた。自分中心の世界。世界は自分を中心に回っている。そんな感覚だった。
ただ、嘘をつくのは嫌だったから、予定をキャンセルする理由はいつも正直に伝えていた。
友だちとの約束も「二日酔いでダルいから行きたくない」と伝えたし、結婚式を欠席したときも「ウチらそこまでの関係じゃないから」と伝え、彼氏とのデートも「気分が乗らないからパス」と、ありのまま伝えた。
そんな私の対応を見て離れていく人もいたし(当たり前)、そんな私でも「まぁ、アイツはそういう奴だし」と受け入れて付き合いを続けてくれてる人もいる(不思議)。
こういう話をすると「逆にそういうことされたら怒るくせに」と言う人もいるけど、結論どーでもいい。基本、私は一人が好きだから約束がキャンセルになろうがどうでもいいし、なんならラッキーとすら思う。
こんなこと言ったらまた友だち減っちゃう…(笑)
これは過去の自分の話ね。
とはいえ、今も根本的な性格に変わりはないんだけど、なるべく相手に迷惑をかけないようには心がけている。
どうでもいい約束は極力しないようにしてるし、遠い日程の約束もしない。飲み会や遊びの約束は当日の気分で決める。
まぁそんなこんなだから、昔っから友だちはそんなに多くなかった。全部自分のせいだから仕方ないんだけど。
でも、あることがキッカケでそれまでの考えを改めるようになった。
23歳のときかな。
人生に疲れちゃって。プツっと記憶が途絶えた。
当時も一応友だちはいたし、10年以上の付き合いの親友もいた。
でも、心の中ではいつも独りだった。
目が覚めて反省したね。生まれて初めての反省。
先生や親、上司に怒られて反省したフリをしたことは何度もあったけど、自分の意志で心から反省をしたのはあの時が初めてだった。たぶん。知らんけど。
記憶が途絶える前に、メモの切れ端にひとことだけメッセージを残していたらしい。まったく記憶になかったけど、あのメッセージは自分でも気づかなかった私の本心だったんだと思う。
そのメモを見て「もっと人を大切にしてみよう」と思うようになった。
とはいえ、いきなり人類すべての人たちに愛と慈しみを持って接するのはムリだから、とりあえず自分の周りにいる人たちから大切にしようと決めた。こんな自分を見捨てずに、ずっとそばに居てくれた人たち。
その人たちが困ってたら全力で力になりたいし、その人たちが幸せなら、私もすぐそばで一緒に幸せを喜びたい。今は本気でそう思ってる。
家族や友だち、仕事仲間の誕生日は一緒にお祝いしたいし、なにもない日でも突然サプライズをしたい。自分の言動で周りが笑顔になってくれたら、それがすごく幸せ。見返りなんていらない。
独りで食べるごはんも美味しいけど、誰かと一緒に食べるごはんも美味しいんだって、気付いた。
今では誕生日に多くの友人がお祝いしてくれるようになった。
間違ったことをしたら本気で怒ってくれる友人もいる。
ツラいことがあった時、「飲み行くか」と声をかけてくれる友人もいる。
生きていくのが嫌になるくらい落ち込んだ時、何も言わずにそっと抱きしめてくれる友人もいる。
可愛げない性格だから「いい。大丈夫」って言って突き放しちゃうけど、本当はすごく嬉しいんだ。
もともと人と関わるのが苦手で、今でも引っ込み思案だし、奥手で人見知りもする。初対面の人に対して拒絶から入るのは今でも変わらない。腹割ってなんでも人に話せるってわけじゃない。
でも前より人に頼ることもできるようになってきたし、自分の弱みをさらけ出すことも少しずつだけどできるようになってきた。
昔はプライド高すぎて、自分の弱さを認めることも、晒すこともできなかった人間だから、これだけでも本当に大きな成長。
自分は大した人間じゃないのに人を見下したり、人の厚意を踏みにじったり、何度裏切るようなことしてきたかわからない。
こんな私を見捨てずにずっとそばにいてくれた人たちは、本当に天使か仏なんじゃないかと思う。
だからこそ、今度は私が恩返しをする。
この人たちがいなかったら、たぶん一生自分は人のぬくもりに触れることはなかっただろうし、あの後もまた同じ過ちを繰り返して、孤独なまま人生ログアウトしてたと思う。
いま私が生きてる時間は、神様が与えてくださったボーナスタイムだ。
だからこそ残りの人生、少しでも周りの人たちに幸せを与えられるような生き方をしていきたい。
…と、誰もいない一人ぼっちの家ですき家の牛丼を食べながら思った。そんな夜。