『ドリルを売るには穴を売れ』を読んで、スタバのマーケティング戦略を分析してみた

最近、初心者にかえろうと思い、佐藤義典さんの有名な著書『ドリルを売るには穴を売れ』を読み返してみた。副業やビジネスをやってる人なら、誰でも一度は読んだことがある本だと思う。

久しぶりに読んでみて思ったことは「マーケティングの本質はシンプルだけど、だからこそ難しい」ということ。本文中にもあったけど「言うは易し、行うは難し」。まさにそれだなぁと。

今回は本書の内容を実践ベースで考えるとどうなるか、スタバを題材に分析してみることにした。正解を断定するんじゃなくて、あくまで私個人の仮説としてここにアウトプットしていこうと思う。

スタバは誰に向けたサービスなのか?

みんなはスタバに行ったことがある?

もしあるなら、何を求めてスタバに行くの?

私もたまにスタバに行くんだけど、

・作業や勉強をしたいとき
・一人で休憩したいとき
・友人や恋人と会話したいとき

こういうときに「あ、今日はスタバ行こう」って思うかな。

他にも、

・コーヒーや新作ドリンクを楽しみたいとき
・スタバというブランド体験を楽しみたいとき

人によっていろんな理由があると思う。

マーケティングについて考える時はこの考え方がかなり大事で、同じ「スタバに行く」という行動でも、一人ひとりの頭の中にはいろんな理由がある。この違いをもとに市場をグループ化するのがセグメンテーションという考え方だね。

人が行動するときには必ず何かしらの理由がある。

例えば、

・仕事に疲れたから「気分を変えたい」
・少し贅沢したいから「気分が上がる時間をもちたい」
・家では集中できないから「落ち着いて作業したい」
・外出先で仕事したいから「Wi-Fiや電源のある環境がほしい」
・一人でゆっくり過ごしたいから「気まずくなく過ごしたい」

スタバはこれらの悩みや欲求を満たしてくれる商品やサービスを提供してくれている。だから私たちはスタバに行くんだよね。

例えば、スタバに行くと以下のような特徴があることに気がつく。

・Wi-Fiがある
・電源席がある
・一人用の席がある
・内装が落ち着いている
・ドリンクの種類が豊富
・季節限定商品がある

これらの特徴が顧客にどんなベネフィットをもたらすのか考えてみよう。

・Wi-Fiや電源席があるから「外出先でも仕事ができる」
・一人用の席があるから「一人でも利用しやすい」
・内装が落ち着いているから「長く過ごしやすい」
・ドリンクの種類が豊富だから「好みに合わせて選べる」

これが機能的価値と呼ばれるもの。早いとか、便利とか、美味しいとか…そういう物理的な価値のこと。

これをさらに深堀りして、「この機能的価値があることで顧客がどんな気分になれるのか?」これが情緒的価値と呼ばれるものだね。

例えば、

・外出先でも仕事ができるから「仕事モードに切り替えられる」
・一人でも過ごしやすいから「気まずさがない」
・好みに合わせて選べるから「少し特別な気持ちになれる」

人間は感情で動く生き物だから、商品を売るときは「情緒的価値」までしっかり考える必要がある。

でも必ずしも情緒的価値を訴求しなければならない、というわけでもなくて。場合によっては、訴求がフワッとしすぎて刺さりにくくなることもあるから、そこは自分の商品やサービスが顧客にもたらす価値から逆算して臨機応変に考えよう。

スタバの差別化軸を考える

本書では、差別化には3つの軸があると紹介されていた。

☆手軽軸
ある程度の品質のものを安く、便利に提供する

☆商品軸
最高品質の製品やサービスを提供する

☆密着軸
顧客に密着して、徹底的に顧客のニーズに応える

ザックリとこんな感じだったね。

これをスタバに当てはめて考えてみると、スタバは商品軸が強いのかなと思う。

ドリンクの質、季節限定商品、カスタマイズ、店舗空間を含めた体験品質。スタバの最大の差別化は、「商品・空間・ブランドを一体化した体験品質」にある。そこに高い利便性が加わることで、商品軸をかなり強くしている。

密着軸の観点でも見てみよう。

スタバはドリンクのレシピなどは厳しくルール化しているけど、細かい言動を縛るマニュアルはあえて作らないようにしている。スタッフが自発的に考えて行動できるようにすることで、温かみのある自然な気配りや会話を生み出しているそうだ。

メインは商品軸だけど、実は手軽軸も強い。

街をドライブしたり散策しているとわかるけど、スタバはとにかく店舗数が多い。駅や病院、商業施設にもあるし、モバイルオーダーも使える。その「便利さ」も大きな競争力。

ただ、スタバが手軽軸を主軸にしているなら、もっと「安い・早い・効率的」が中心になるはず。スタバはむしろ、多少高くても「この空間、この体験、このブランドを選びたい」と思わせる方向だから、商品軸が主軸と考えてよさそうだね。

スタバの4P

ここでは先程の差別化軸をもとに、スタバの4Pについて具体例を混ぜながら見ていこうと思う。

まずは4Pのおさらいから。ちょっと表現が硬いけど、本書からそのまま引っ張り出すね。

☆Product(製品・サービス)
これを通じて顧客に価値がもたらされる

☆Promotion(広告・販促)
製品・サービスの価値を顧客に伝える

☆Place(流通・チャネル)
実際に顧客に価値を届ける経路

☆Price(価格)
集金することで会社に価値の対価がもたらされる

これをスタバにあてはめて考えてみよう。

Priceについては、すでに書いているように「一般的なコーヒーより高めのプレミア価格」に設定されている。

Placeは、スタバがどこで価値を届けているのかを思い出してみるとすぐにわかるね。実店舗だけじゃなく、駅、商業施設、アプリ、モバイルオーダー、最近だと病院内でスタバの看板を見かけることも多い。

この2つは難しく考えなくてもすぐにわかると思う。

面白いのはProductとPromotionだ。

まずは、Product(製品・サービス)について。スタバはどんな価値を提供しているんだろう。

コーヒー、フード、空間、接客、カスタマイズ、ブランド体験、オリジナルタンブラー、季節限定商品…ざっとこんな感じかな。他にもあるかもしれない。

スタバの強みのひとつは「コーヒーの品質」だ。

一般的にエスプレッソの適正な抽出時間は18〜23秒と言われているらしい。18秒未満で抽出が終わってしまう(早すぎる)と、粉の挽き目が粗すぎて味が薄く酸味が強くなり、逆に23秒を超えると、挽き目が細かすぎて嫌な苦味や雑味が出てしまうそうだ。

スタバでは、この時間から1秒でも抽出がズレた場合、それは商品として出さないと決められている。

これだけでも、スタバがどれほどコーヒーの品質にこだわっているのかがわかるね。

さらに、スタバには「抽出後のエスプレッソは10秒以内にミルク等と混ぜないと劣化する」という、通称「10秒ルール」まで存在している。バリスタは「18〜23秒の抽出時間」の間にミルクのスチームを終わらせ、ベストなタイミングでドリンクを仕上げるようトレーニングされているそうだ。

スタバの品質の高さは、こうした裏での地味な取り組みによって実現している。

スタバの魅力は商品の品質だけじゃない。世界観も強みのひとつだ。

バリスタの接客、座り心地の良い椅子、落ち着いた音楽、おしゃれな空間(トイレまで綺麗)、高速Wi-Fi、電源席…あの世界観が好きでスタバに行く人も多いと思う。

スタバはこうした世界観を壊さないために、いくつかの取り組みをしている。

そのひとつが「値下げやセールを行わない」ということ。以前は、スコーンとコーヒーのパーフェクトペアというものがあったそうだけど、今は値下げの取り組みを積極的に行っていない。

セールをしたらセール時以外に売れにくくなるというのも理由のひとつだけど、セット買いを勧めるとファストフード店のような、どこか安っぽいイメージになってしまう。だから基本的に値下げやセールはしない。

店内を見渡してみると、他にも様々な工夫が施されているのがわかる。

例えば、丸いテーブルに1つの椅子。あれは、一人で来た顧客にも孤独感を抱かせず、長く滞在してもらうための工夫のひとつだ。

他にも、スタバ独自の面白いルールがある。

それが「10分ルール」だ。営業時間よりも10分早く開店して、10分遅く閉店するというもの。

一体なんのために?これは自分が顧客の立場になってみるとわかりやすい。

例えば、スタバで仕事をしようと思って朝早くに家を出たとする。でも少し早く着いてしまった。「この微妙な時間、どうやって潰そう…」そう思ったときに、まだ営業時間前なのに「もうお店開いてますよ〜」と言われたら、かなり嬉しいよね。

閉店時もそう。気づいたらもう閉店時間。慌ててコーヒーを飲んで早く帰ろうと思ったときに、「掃除してるのでもう少しゆっくり飲んでてください」なんて言われたら安心するよね。

この10分ルールは、顧客の期待値を超え、スタバのブランド価値を高めるために存在している。

スタバは商品だけじゃなく、こうしたホスピタリティ面によっても「サードプレイス(第三の居場所)」という心地よい体験を提供していることがわかる。

語りだしたら長くなってしまった…。

次はPromotion(広告・販促)について。ここにも、スタバのマーケティングの面白さが隠されている。

まず、スタバのプロモーションがどのように行われているかを分析してみると、SNSの活用、店頭POP、口コミ、新商品や季節限定商品による話題化、スタバカード…いろいろあるね。

特徴は、広告よりも店内での顧客体験を高めることを重視していること。テレビCMよりもテイスティングや口コミが最大の広告になると考えているんだね。実際にスタバはテレビCMをほとんどやっていない。

そもそもスタバはすでに独自のブランド価値があるから、出店そのものが強い広告になる。

それにスタバは日本人の多くの人が知っているブランドカフェなので、ファンも多い。ファンがいればその人が周りの人に勝手に勧めてくれるから、それが一番の集客になる。

私もスタバにはあまり興味がなかったけど、警察官の頃、同期ですごいスタバ好きの子がいて、新作商品が出るたびにスタバに連れて行かれ、気づいたら自分もスタバに通うようになっていた。

ビジネスはこの状態を作れたらかなり強い。

普通はどの事業主もお金を払って認知を取りに行く。SNSを見ていると流れてくる広告や新聞のチラシ、テレビのCM…すべてにお金がかかっている。

でも、ファンがいればお金をもらいつつ、自分の商品やサービスを広めることができる。しかも、第三者からの紹介は自分で自分の商品やサービスを紹介するよりも信憑性があるから強い。

スタバはそれだけじゃなく、様々なプロモーション活動をしてきた。

スタバが最初にやったことは、「スペシャリティコーヒーを広める」ということ。缶コーヒーとの違いを説明したり、テイスティング(試飲)、バリスタを呼んでのセミナー。

これはビジネスをやってる人にも是非知っておいてほしい考え方だ。

新しくビジネスを立ち上げるとき、多くの事業主はいきなり自分の商品やサービスの魅力を語りだす。でも、その前にやるべきことがある。

まずは自分の業界に興味を持ってもらうこと。

北海道の旅館を勧めたいなら、まずは北海道の魅力について伝える。そしたら、その魅力に感化された人は「よし、北海道に行こう」と思い、そこから旅館を探すようになる。

恋愛系の発信をしているなら、まずは恋愛の魅力について伝える。恋愛にまったく興味ない人に「恋愛のテクニックは〜」なんて語りだしても、そもそも見てもらえないよね。

顧客がまだそのカテゴリー自体に価値を感じていない場合は、いきなり自社商品の魅力を伝えるんじゃなく、まずは大本(カテゴリー)の魅力を伝える必要がある。

スタバも最初は「スペシャリティコーヒー」の魅力について伝えた。その結果、セミナーに来た人が「スタバじゃなくてドトールに行こう」となっても構わない。とにかく、まずはスペシャリティコーヒーの魅力さえ伝わればそれでいい。

他の取り組みで言うと、スタバにはスターバックスカードというものがある。スタバカードで買うとポイントが付き、貯まれば何かプレゼントがもらえるという、どの飲食店でもやっていそうな取り組みだ。

ただ、ここでよく考えてみてほしいのは「一貫性」だ。

もしこれが、「ポイントが貯まればコーヒーをプレゼント」ではなく、「コーヒー半額」だったらどうだろう?

高品質なブランドコーヒーを提供しているスタバにとって、値下げやセールはブランドイメージの毀損に繋がる。だから「値下げ」ではなく「プレゼント方式」を採用したんだと思う。

ここまでで私が強く伝えたいのは、4Pはすべてをバラバラに見るんじゃなく、一貫性が大事ということ。もっと言うと、4Pだけじゃなく、その前の差別化軸、ターゲット、ベネフィット…すべてが綺麗に繋がっていなければならない。

マーケティングの戦略を考えるとき、私もここをかなり強く意識している。

スタバはただコーヒーを売っているようで、実際には過ごす時間や空間、利用することによる気分転換…そこまで含めて価値を提供し、その対価として顧客からお金をもらっている。

この視点で世の中のあらゆるビジネスを見てみると、その企業ならではの特徴や強みがどんどん見えてくる。奇をてらうような施策に出会えることもあるし、知れば知るほどマーケティングの奥深さや面白さを感じる。

本書の言葉を借りると、
『マーケティングはお客様の心の中で起きている』

今回のスタバの事例は、世の中に溢れているマーケティングのひとつの事例でしかない。

ぜひ、みんなもそれぞれのフィルターでマーケティングの世界を覗いてみてほしい。

思ったより長く語ってしまって疲れたので、今日はここでおしまい。

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